だって二瑚は、あたしが泣かない限り手は繋がない。
繋いでほしいから。
あたしはわざと、遅刻して絶叫して泣くんだ。
「そろそろ行くぞ」
「うん」
二瑚は手を離し、スタスタ駅へ向かう。
あたしは二瑚を追いながら、離れた手を見ていた。
寂しくなんてない。
そう思いたい。
でも、気持ちは素直で。
寂しいって思うんだ。
離れたくないって、思うんだ。
電車へ乗りこむ。
二瑚はあたしが痴漢されないよう、壁と自分の間にあたしを挟んでくれた。
電車に乗る間、二瑚は一言も話さない。
満員電車とか、関係なく。
何だかあたし、最近欲張りな気がする。
年下の二瑚に、沢山してほしいことがある。
抱きしめてほしい。
手を繋いでほしい。
もっと沢山、二瑚のことを知りたい。
そう思うのは、我が儘なのかな?
あたしだけなのかな……?


