…そういえば、幸来おせーな。
俺は立ち上がり、トイレへ向かって歩き出す。
「……ん?」
幸来は、キョロキョロと挙動不審と思われるような行動をしていた。
…何してんだ、あれ。
もしかして、迷子か?
情けねーな、幸来は。
思わず笑みをこぼしながら、近づく。
「幸来」
「あっ、二瑚―――!」
ダッと一目散に駆けてきた幸来は、そのまま俺に抱きついた。
ちょっ、理性が飛ぶ……!
「迷子か?」
冷静を保って言うけど、正直早く離れてと思う。
早く離れねーと、俺の理性が飛ぶ……ッ。
「そうなの!」
「相変わらず馬鹿だなぁ。
変な奴には絡まれなかったか?」
「大丈夫だよ!
てか、あたしに絡む人なんていないよ!」
そうは言うけど。
幸来だって、高校2年生の女だ。
性欲を満たしたい変な男が幸来を連れ去るかもしれない。
それだけは、駄目だ。
俺が許さない。


