あの日。




幸来をいつも通り後ろに乗せ、マンションの下に着いたのは良いけど。

何も食べずに放課後まで過ごしたのがマズかった。

息切れした俺に幸来は「大丈夫か?」聞かれてと心配され、聞かれたくなかったため「太ったか?」なんて聞いてしまったけど。

幸来が怒るのにも、一理あるよなぁ。

別に俺、幸来が太っても気にしねーんだけど。

俺が幸来のどこを好きになったのか聞かれれば、外見と答えないのは確かだから。

幸来が太ってようが痩せていようが、内面が変わらなければ関係ない。

本当俺、何しているんだか。




幸来が怒りながら自転車を戻しに行くのを見ていたら。

激しい眩暈に襲われて、その場にうずくまって気を失って、気が付いたら幸来の派手な部屋の中にいるとは。

情けねーよな、俺。




幸来は知っているのだろうか?

外見は完璧人間な俺の中身が、実はこんなにも脆いだなんて知ったら。

俺のこと、軽蔑するだろうか?




幸来は俺のことを初めて愛してくれた人だから。

手放したくないって思う俺は、我が儘なのだろうか?

こんなこと言っても、良いのだろうか?




「あー、切りてー」



空を見上げながら、思わず呟く。

切りたくない。

切ったら必ず、幸来を心配させるから。

でも、切りたい衝動が収まらない。