「幸来」
クイッと二瑚は、綺麗な人差し指であたしの顎を持ち上げた。
そして真面目な顔をした。
思わず、ドキッとなる。
「脳みそどこに置いてきた?」
「……は?」
「幸来の脳みそは単身赴任中か?
エベレスト山頂か?それともブラジルか?
悪いことは言わない、今すぐ取りに行って来た方が良い」
あ、
あたしのドキッを返せ!馬鹿二瑚!!
あたしは人差し指をパンッと叩き、そっぽを向いた。
「このド馬鹿!
この世の中に完璧な人間などいないって、お前はまだ知らねぇのか!?」
「に、二瑚は完璧じゃないの!?」
二瑚は完璧の塊みたいな存在だ。
頭は良いしスポーツも出来るし、容姿端麗だし、表だけ見れば品行方正だし。
毒舌で生意気でドSな所を除けば、非の打ち所のない完璧少年だ。
「当たり前だろ。
俺にだって弱点はある」
「何ッ?」
「幸来には一生教えねーよ。
どうせその空っぽの脳みそで考えたんだろ。
俺の弱点を知れれば、日頃の恨みが晴らせるってな」
……す、鋭い!
さすが早乙女二瑚!!


