「ごめんね。
今から自転車の鍵取ってくるよ」
あたしは踵を返し、階段の方を向いた。
エレベーターを待つ暇なんてないと思ったからだ。
「待て」
その腕を、二瑚に捕まれた。
振り向くあたしの心臓はうるさい音を立てていた。
「良い、歩きで行くぞ」
「良いの?」
「ああ。
たまには幸来と話しながら行くのも良いだろ」
え?
たまには幸来と話しながら行くのも良いだろ?
あたしの目の前にいるのは、本当に二瑚?
あの毒舌でドSで上から目線で生意気な二瑚?
…二瑚とは思えない台詞の気が……。
「二瑚…?頭大丈夫?」
「は?
何を言っているんだ。
大丈夫に決まっているだろ。
その言葉、そっくりそのまま、幸来に返してやるよ」
相変わらず、毒舌なんだから。
でもあたしはにっこり微笑み、二瑚の隣に並んだ。
「どうしたんだよ、気持ち悪い。
ニヤニヤするな、不審者が」
「ストーカー扱いの次は、不審者扱いですか」
「本当のことだろ」
やっぱり、ムカつく!!


