電気も水道も通ってない、生活するには難しい家で、二瑚は過ごしている。
きっとお父さんと鏡花さんの体を重ねる淫らな行為をしている近くで。
それを思うだけで、凄く……辛い。
あたし、二瑚を救うことって出来るのかな?
きっと二瑚の傷は、あたしが思うよりずっと深くで鋭い。
あたしが癒すことは、出来るのだろうか?
弱気になっちゃ駄目だ。
強さで自分の中にある寂しさを隠すことの出来る二瑚を簡単に包めるよう。
あたしは強くならないと駄目なんだ。
本当は弱い二瑚が、その弱さを表に出せるように。
二瑚はプライドがかなり高いから。
表には出せないと思うんだ。
だからせめて、あたしの前だけは。
あたしの前だけは、出してほしい。
二瑚の、本当の笑顔を見せてほしい。
「二瑚ッ!」
「……幸来」
屋上のコンクリートの上で寝転がっている二瑚を見つけ、あたしは駆け寄った。
体力のないあたしは、すぐにしゃがみ込んだ。
「何でこんな所にいるのよ!
屋上は立ち入り禁止のはずでしょ!?」
「……開けたよ、そんなの」


