「雫……」
「私は、幸来ちんが幸せになることを願うから。
幸来ちんがニコっぺと幸せになれるよう、応援するから。
何か辛いことがあったら、私にいつでも相談して?」
「雫…ありがとう!」
あたしは雫が握ってくれていた掌を、握り返した。
あたし、本当に幸せ者だ。
「失礼します。
上野先輩と、内山先輩いますか?」
ガラッと人目も気にせず扉を開けたのは。
雫の弟で彼氏、内山慎くんだ。
「どうしたの慎くん」
「幸来ちん先輩!
来てもらえますか!?」
あたしは雫と首を傾げながら、慎くんの待つ廊下へ出た。
ちなみに雫と慎くんが呼ぶ“幸来ちん”とは、“幸来ちゃん”を略したものだ。
雫が“幸来ちん”と呼ぶので、年下の慎くんは“先輩”を付けるのだ。
2人の呼ぶ“ニコっぺ”は、二瑚のこと。
本当、変わったあだ名つけるよねぇ。


