ブレザーの袖で包帯を隠し、再び溜息をつく。
思いだすのは、幸来の笑顔だ。
救いようのない馬鹿で。
呆れるほどドジで。
…でも、真っ直ぐすぎるほど優しくて。
俺には本当、勿体ない先輩で彼女だと思う。
俺の過去を知っても、何も言わなかった。
切りたくなったら言ってくれとまで言っているほど。
言われた時は、素直に頷いたけど……。
「……言えねーよなぁ」
また切りたくなっている、だなんて。
万引きをしようとは思わない。
その店の店員の人生が狂うことを、俺は知っているから。
俺は無意識のうちに、左手で右手首を押さえていた。
幸来を、泣かせたくない。
だけど、抑えられない。
「……何やってんだろ、俺………」
本当、
馬鹿みてーだな………。


