結局、俺が考えた作戦は。
「ニコっぺ?どこ行くんだ?」
「トイレ」
財布を持って立ちあがった慎に向かい、そう言う。
そして足早に、教室を抜け出した。
向かった先は屋上。
扉の鍵は、予想通り閉まっている。
俺はポケットから、ヘアピンを取り出した。
母さんの鞄を、目を盗んで漁り、勝手に押収したもの。
ヘアピンをそのままにしては入らないので、細長くして鍵穴に差し込む。
手早くヘアピンを動かすと、扉が開いた。
誰もいない屋上の日陰の部分を探し、俺は座った。
そしてまた、溜息をつく。
ちらり。
俺は右手首を見た。
制服のブレザーの袖をめくる。
血の滲んだ包帯が出てきた。
引っ越す前…万引きをしていた頃、傷つけた手首。
幸来に会って、万引きはしなくなったし、切らなくなった。
だけど、
最近切りたい衝動が、たまにある。


