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4時間目の授業の最中。

俺はやっている範囲を覚えたので、授業をまともに受けないで机に突っ伏していた。

眠いんじゃない。

…腹減ったんだ……。




やっぱり、朝食抜きで4時間授業受けるとか、拷問だろ。

でも父さんも母さんも、鏡花(きょうか)さんもご飯なんて作んねーし。

そもそも、鏡花さんがご飯なんて作ったら、俺は間違いなく、病院送りだ。

鏡花さんはご飯は作るけど、中に裁縫針とか平気でいれるから。

腹痛で苦しむ奴を見るのが好きだって言う、異常な性格の持ち主だから。

気軽に食べられない。

いれられない父さんが羨ましいと思う。




「ニコっぺ、大丈夫か?」

「……なんとか………」




隣の席の内山慎(しん)が、俺の顔を覗きこむようにして見てくる。

慎は、姉の雫と付き合っている。

血が繋がっていないから付き合えるんだ、とコイツらは言うけど。





「もうすぐ授業終わるからな。
それまで我慢しろ」




頷いてはおくけど。

慎はまだ、知らない。





俺、今日昼飯も抜きだってこと。

しょーがねぇじゃん、お金ねーんだから。

本当は昨日母さんが昼代と夜代くれるはずだったんだけど、帰ってこねーし。

どうせ愛人と一緒にホテルでイチャイチャだろ?

…本当、親としてどうかと思うよな。




どうしよう。

慎にどう説明しよーか。

昼飯も抜きだとか言ったら、絶対慎は「お金貸してやる!」って言う。

だけど、返す金がないんだよなぁ……。




俺は再び、溜息をついた。