この気持ちは、気付かれない。



「優衣……」

『皐月ちゃんには黙っておくなんてできなかったの…!話したら傷つけるのもわかってたけど、黙っててもいつか知られて傷つけると思ったの…。だから、電話で…ごめんね…』


真っ直ぐに優衣の思いが伝わってきた。そうだね、優衣は、そういう風に考えられる子だ…


「謝らなくていいよ…」


優衣は、なにも悪いことなんかしてない。むしろ償うべきはわたしの方なのに…
こほん、と電話の向こうで咳払いが聞こえて、優衣が息を整えたのがわかった。


『皐月ちゃん…わたしは秋くんを選ぶよ。だから、皐月ちゃんが自分を責めるのはやめて。』


えっ…

『皐月ちゃんはずっと自分を責めてるだろうと思ったの。でも、わたしは皐月ちゃんの好きな秋くんを奪った。だからわたしたちは同じだよ。』


それは、優衣の言葉とは到底思えないものだった。





奪った…同じ…





『だから、自分を許してね。わたしは幸せになるから、皐月ちゃんも幸せになって。』


優衣は秋と幸せになると言った。それはわたしにとって辛い言葉のはずなのに、どうしてだか、わたしはあんまりつらくない。それはきっと…



「…優衣が幸せな方が、わたしも嬉しい。」


秋への思いは、あの日に口に出してその場で振られたことでかなり薄れていた。もともと叶うわけない気持ちだったんだし。だから、苦しくなるほどつらいことじゃなかった。


『…皐月ちゃん?』


大丈夫?と心配そうな声がする。

大丈夫よ、と返してわたしは言葉を続けた。

わたしの大好きな優衣が幸せになるのなら、これ以上嬉しいことはないじゃないか。