「うっそ。ありえねぇ。」
「なにが?」
「てかウチのサークルの奴ら全員皐月には彼氏いると思ってると思う。」
「え?なんでよ、」
居るなんて言ったこともないし、そんな素振りを見せたつもりもない、んだけど…
「いやなんかめっちゃ落ち着いてるし、色気あるし、美人だし可愛いし…」
「おう、めっちゃ褒めるじゃん。ありがと、」
「え、うわー。皐月に彼氏いないとかわかってたら狙ってたのに。」
「んー?」
「彼女作ったの失敗した。」
「こら、そーゆーこと言わないの。」
うだうだと何か言っている潤くんをたしなめながら、その猫っ毛に手を滑らせた。
色は違えど、わたしの心臓をざわつかせる素敵なそれ。
自分で手を伸ばさなかったそれなのに、今手に触れているのが本当に触れたい人ではないのがとっても苦しかった。
自分の選んだ道だからって、いつもいつも納得いくわけじゃない。



