「…何かあるだけで、全然違うのにな。」
ちらりと横を見ると、山本くんは真っ直ぐに絵を見つめていた。
「俺さー、すげーばあちゃん子だったの。田舎に帰るのが一番の楽しみで、夏休みなんかは1人でばあちゃんちで過ごしたくらい。」
友達と遊ぶよりもばあちゃんちに行くほうが断然楽しかったよ、と少し笑いながら続けた。
「…中1の時にさ、ばあちゃんが死んじゃって、それでじいちゃんも一気に老け込んで介護が必要になってさ…中3のときうちの両親はそのこともあって離婚して、母親はじいちゃんのとこに行ったし父親は俺を引き取ったけどほとんど放置するようになった。…俺の中学生の記憶はそれしかない。」
重くてごめんなーと山本くんは明るい声色で言った。だけど、その表情は見慣れないものだ。
「親は離婚したけど、俺はその時もまだばあちゃんの死を引きずってた。だから離婚したのが辛いなんて思ったことない。…あの時から、俺、すでに1人だったんだ、ばあちゃんが死んだ時から。母親がいなくなったとか夕食を1人で食べるようになったとか、なんとも思ってなかった。思い出すのはばあちゃんのしわくちゃな笑顔ばっかりでさ。」
そんな俺を見るのも、父親は嫌だったんじゃねえかな、とつぶやいた。
「…ばあちゃんは、自分が死ぬのをわかってたみたいに身辺を片付けてた。だから遺品なんてほとんどなくて、しかもじいちゃんが手放さないし母親とも縁が切れてるから俺の元には何もない。何か、残してくれれば良かったのにな…今でもそう思うよ。」



