この気持ちは、気付かれない。





次の日山本くんは車に乗ってわたしを迎えに来た。


「免許持ってたの?」

「まあな〜合宿で取った!」


わたしも免許取らなきゃな、と思う。だけどなかなかやる気が起きない…免許合宿はわたしには無理だろうし。

山本くんは危なげなく車を走らせてわたしたちはどこかへ向かった。

運転、しなれてるのかな。
どこに行くんだろう。


1時間半くらいだろうか、車を走らせて着いたのは海だった。


「海だ…」


天気が関係してたのはそういうことか。
光がキラキラ反射しててとっても綺麗。


「ここ、人が少なくていいんだよ」


彼はよくここへ来るんだろうか。

確かに穴場な、人のいない海だった。

そういえば随分と道も入り組んでたっけ…


「夏といえば海だろ〜」

「もうすぐ終わるけどね」

「いや、今年はまだまだ暑いらしいぜ?」


暑いだけが、夏でもない。海にはもうクラゲがいるし、花火大会もあと1回しかない。青々としていた緑も、少しずつ赤みを帯びてくるのだ。




「…海、久しぶり。」

「おー、よかった。海と山はどっちが好き?」


海と山?どっちだろう…どっちもあんまり行ったことないからな。


「海かな…」

「俺も」


昔、母さんが言ってた。

“この海をずーーーっと行けばわたしの故郷に着くの。とっても素敵な街よ。”


素敵な街、か…


「フランス、行ったことある?」

「フランス?」


遠くの方に見える水平線から目をそらさずに、呟いた。わたしの小さな声は彼にもきこえていたみたいだ。


「フランスは行ったことねぇな〜」

「どこかには行ったの?」

「韓国とカナダなら行った」


へえ。初めて聞いた。


「旅行で?」

「韓国はな。カナダへは語学留学で行ったんだよ、一年の夏に。」

「留学してたの?」

それも全然知らなかった。

1年の夏?ああ…そういえばあの頃はわたしも大変だったっけ…


「海外は楽しかったけど、俺はやっぱ日本が好きだな〜食べ物はうまいし水は出るし言葉は通じるし。」


当たり前か、って笑いながら言う彼にやっと視線を向けた。


「…!」


山本くんも海を見ているのかと思っていたから、ばっちり目があって驚いた。ずっと、見てたの?

なんだか居心地が悪くて、わたしはすぐにまた目をそらした。