この気持ちは、気付かれない。






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あれからしばらく経って。

優衣から「弘くんが帰ってくることになったの!地元で4人で集まらない?」と連絡があった。



どうやら優衣が山本くんのところに行く予定だ
ったのが、山本くんがこちらに帰ってくることになったらしい。


まだしばらくある。約束の日は10日後。






わたしは大学1年の夏に一人暮らしを始めていて、あの家からも継母からも離れることができた。


家事全般も問題ない。

ただまあ、面倒で食事を抜くことはよくあるけれど。



学校とバイトに追われる日々で、たまに一応所属しているサークルに顔を出すような生活をしていた。








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今日はサークルの飲み会があって、明日の夜には4人で会う予定だ。












「皐月!久しぶりだね!」

「あ〜ほんと。ごめんね、なかなか来れなくて。」

「飲み会だけでも来てくれて嬉しいよ〜。皐月が来るとみんな気合入るし。」




ははは、と笑っているのはサークルで一番気があう翔子。

翔子がいるからサークルに来れるようなもんだ。




「なんかまた痩せたんじゃない〜?ちゃんと食べてるの?」

「食べてるよ、それに痩せてなんかないし。」

「元が細すぎるの!今日はちゃんと食べて飲んで!はっちゃけなさ〜い!」




がちん、と景気のいい音がして、わたしは翔子と一緒にビールを煽った。








「皐月久しぶりだな!相変わらずいいのみっぷり…」

「潤くん!いえーい、かんぱい!」




大勢で飲むと楽しくて楽しくて仕方がなくなる。


わたしは笑い上戸らしく、酔うとずーっとにこにこしてるらしい。何が楽しいのかはわたしにもわからないけど、楽しい。





「また皐月にやにやしてるし。可愛い。」

「ナチュラルに褒めるねえ。えらいえらい!」

「んー本心なんだけどねー?」

「ふふふ、ありがとう。」





黒よりは少し軽く見えるダークブラウンに染めてある、ふわふわの猫っ毛をうりうりと撫でてやる。


潤くんはいつも優しくて柔らかい雰囲気だから仲良しだ。



人見知りでコミュニケーション能力の乏しいわたしでも仲良くできるんだから、彼はきっとコミュ力の高いモテモテ男子。