この気持ちは、気付かれない。




「え、あ?皐月起きた?」

「……」


目を開けてすぐに人がいたことに、正直ほっとしてしまう。


それが優衣や秋ではなくて、山本くんだったことにも少し安堵してしまった。そんなのいいわけないんだけど。

やっぱりいたか、みたいな気持ちになる。ただそれを認めることはわたしにはできない。


「…なんでいるの。」


わたしはいつもなんでなんで、ばっかりだ。

その訳なんてもうとっくに気付いてる。


だけどそれを認めてしまったらわたしは優衣に顔向けできなくなる。優衣を失ってしまう。それが、怖い。



「…俺が自分で決めたの。皐月に嫌がられてももう諦めないって決めてんだよ。……水、飲む?」


当たり前のように冷蔵庫を開けて、水のペットボトルを渡してくる。

その様を見ながら既視感を覚えた。…この人ももう、ここに馴染んでしまっている。



「…わたし、寝てた?」

「覚えてねぇの?店で気ぃ失って、俺がここに連れて帰ってきた。寝てたのは半日くらいかな。なんかうなされてたけど夢みてたの?」


夢。見てたんだろうか。そんな気もする。なんだかとっても気持ちが良かったのに、酷く苦しかったような気もする。


「わかんない。そうかもね。」

「ふーん。体調は?なんか食べる?」



食欲はぜんぜん感じない。胃はムカムカしてるし、あんまり体調は良くないんじゃなかろうか。


「…食べたくはないかな。でも大丈夫だから、山本くん帰っていいよ。昨日から診ててくれたんでしょ、ありがとう。」


この人に甘えていたら、わたしは元に戻れなくなってしまう。一人でも大丈夫なわたしがどこかへ行ってしまう。

大事な人を作ると、苦しむのは自分なのだ。だからわたしは彼を突き放す。