「……男欲しくないの?」
本当に疑問、といった感じで顔を上げた潤くんに聞かれた。
覗き込んでくる目は真剣で、ああこれはマズイ、と思った。
「…あんまり、欲しいとは思わないかな。」
「なんで?モテるっしょ、実際。」
「いやいや、全然だよ。」
「あー男いるように見えるからだわ。」
「見えるかなぁ…そんな風に。」
「……いやー、まじか。」
まじか、と彼が繰り返すのに、返事をするのは止めた。
こんな話をしていると、自分がどれだけ人として欠陥品なのかが思い知らされる。
いつまでもずっと飽きもせずに想い続けて、なのに他の人にも流されてしまって、一番大事なものを傷つける寸前のところにいる。
きっといつかはバレてボロボロになって、彼女だけじゃなく自分もボロボロになるのだ。
わたしはいいけれど、彼女は。
あの子だけは傷付けたくない。
わたしなんかが傷付けていい子じゃないんだ。
考えているうちにどんどん気分が沈んでいって、足を抱き寄せて頭を抱えた。
「…あ、皐月?なんか、俺言っちゃいけないこと言った?ごめんな?」
「あーいや、そーゆうんじゃない。単純に眠たくなっただけだから。大丈夫。」
顔はあげずに返事をする。
だめだめ、人に踏み込まれると、考え過ぎてしまう。
いつもは見て見ぬ振りをする自分の中身を嫌でも見てしまう。
だめだ、だめ。わたしがこんなんじゃ、隠しきれなくなる。
くるくると回り始めた目の前の世界に、気分が悪くなる。
……だけど、不意に頭に乗せられた温かい潤くんの手は、悪くないなと思った。



