すこしためらいがあった。 この先に雫がいるんだ……。 昨日あんなに傷つけた。 なんで、大切なものを大切にできないんだよ、俺はっ……。 唇を噛み締めて、ドアを開けた俺。 飛び込んできたのは、男に抱き締められてる雫の姿……。 傷口に塩をぬるように、胸が痛かった。 「あ……っ。信太。」 すぐに分かった。 この男が、雫の大事な奴。 ――綾野湊なんだって。