桐生君にも悪いと思ってる。お互いを利用するだけの関係なんて、良くないと知ってる。
でも無理なの、忘れられないなら気を紛らわせるしか無いって分かってるから。
嫌だよ、思い出したく無い。
微笑みあってる二人も。
私には見せてくれない笑顔も。
私を映してはくれない、あの双眸も。
記憶から消えてくれればいいのに、でも、どこかに忘れたくないと叫ぶ自分がいた。
こういう想いは、互いに同じ想いを持つから、拮抗する。一方的な拮抗を崩すには、わたしが恋心を無くすか上書きするしか方法がないのだ。
考えれば考えるほど焦って階段を登る足が早くなる。
ーーーきりゅう、くん、
ーー桐生くん
「きりゅ、くん」
こんなときにだけ頼るなんて酷いかもしれない。でも縋らずにはいられない。誰かの慰めが、温もりが欲しかった。手を伸ばして、触れたい。あの綺麗で悲しげな瞳に、ちゃんと私を映して欲しかった。

