私にとって小田切君は特別な存在だったけど、小田切君にとって私はそこらの有象無象に過ぎない。


意識されてることなんてない、私は差し詰め漫画のモブ、風景と同じ。没個性で周りに埋もれる一般人。小田切君にとってのヒロインは、如月さんでしか無いのだ。


ーー少しでもいいから彼の目に映りたいと思う私は馬鹿なんだろうか。




「花霞ちゃん?やっぱり今日変だよ?どうかした?なんかあった?」

「え、あ、」

「もしかして具合悪い?」




ボーッとしていて星絆ちゃんの話を聞いていなかった。反応のない私を心配そうに見る彼女に申し訳なく思う。悪いのは体の調子より、心の調子だったけど、話を振られた私は思わず頷いてしまった。




「う、うん。少し」

「やっぱり!じゃあ休まないと!次は生物だからラッキーだね、お爺ちゃんには上手く誤魔化しとくよ!」




グッと親指を突き立てる彼女は逞しい。


お爺ちゃんとは定年間近の生物の先生のこと。ほのぼのとしていて、尚且つサボりやすい先生だから、皆から好かれている。