彼の名前は桐生 蓮。


桐生君は有名で私もよく知っている。一度は彼を描きたいと美術部の人が騒いでるが、頼んでも睨まれるため、その願いは叶わないらしい。学校一と言っても過言ではないくらいモテるみたいだけど、彼の怖さに足がすくむ女子は少なくはない。だから彼は、有名。よく、影で噂されている。


恐ろしいくらい目鼻立ちが整った顔をしている桐生君。金髪に隠される切れ長の目は和らぐことなく、私を射る。その冷たい目が、私は苦手だった。


ーー最悪だ。


何で桐生君が此処に居るんだろう。


私がここにいる手前、桐生君が居ちゃイケない理由はない。だけど居ないで欲しかった。今の涙のわけを、聞かれたくなかった。


この醜い心を見透かすようなその目から逃れるように、俯く。