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ここは屋上。



今は授業中で、屋上には誰も居ないはずだった。


しかし蓋を開けて見ればいつからか彼はここにいたのだ。


その声には聞き覚えがあった 。


掴まれた手首はびくともせず、私はただ彼を見つめる。




「…桐生、君…」




無造作にセットされた金髪。


髪から覗く切れ長の目は相変わらず冷たい印象を受ける。


だらしなく着崩された制服はどこか色っぽい。


試しに名前を呼んでみれば、無表情で吸っていたタバコの火を地面に擦り付けて消した。