中学一年。

中学に入学してから、少しずつ何かが変わり始めた。
関係が浮き彫りになり、乱れ始める。

芽生がいて、乙樹がいて、日莉がいる。この俺達の関係は変わらないと思っていたがーーその変化は目に見えるほどだった。

意識しているからこそ、分かった。
日莉が、乙樹を好きだと。
そして俺が日莉を好きだと言うことにも。
好きだからこそ、気付いた。
日莉の目に映るのは俺じゃないんだと。



「蓮ってば最近元気ないね?」

「…あ"?」

「心配してるんだから睨まないでよお!」



もう!と頬を膨らます日莉。

お前は乙樹だけを見てればいいんだよ。



「…チッ」

「舌打ちも禁止ー!」



自分の気持ちに気付いてから、日莉が視線の先でチラつくたびにイライラする。俺の中を掻き乱したあとはいつも、乙樹の元に戻るからだ。なら、さっさと戻れ。



「何か悩みでもあるの?相談なら乗るよ?」

「…ほっとけ。いちいち俺に構うんじゃねえよ」

「何言ってるの!」



腕を引っ張られて、顔を鼻すれすれまで近づけられる。



「蓮は私の幼なじみなんだよ!?心配するに決まってる!」



悲痛に歪む綺麗な顔。

ーーそう言うことを言われる、余計に辛い。
諦めることも、突き放すことも、出来なくなるだろうが。行き場の失った愛しさをただ、抱え込む。



「…幼なじみ、か」

「そうだよ!幼なじみ!
私にとって蓮はとっても大切なひとなの!」



それは俺を縛るには都合のいい、残酷な言葉だった。