目尻から伝う涙をもう一度、拭う。


息を吸い込み、空を仰ぐと、気の遠くなるほど高く淡青の冬の空がある。


まるで何もかも吸い込んでしまうような青さ。それでも空が抜けるような青さに澄み切ってる。


深呼吸するように緩やかに息を吐く。


何だが凄く穏やかだ。冷たい風が心地好い。





ーでも、私にはまだ、しなければならない事が残っていた。


二度目の緊張感に包まれる。私はもう一つケジメをつけなければならない。


臆病だった私はずっと桐生君に縋っていた。


桐生君に包まれる事で前を見ないで、ずっと閉じ籠って。あまりに心地好かった桐生君の腕の中で、泣きじゃくって。優しい桐生君を逃げ場にして、現実から目を逸らしていた。


でも、それも終わらせなくてはならない。




「出てきていいよ」




小田切君が去った後、空を仰いでその場に立っていた私はそう呟く。




「ーー桐生君」




風に掻き消されてしまいそうなぐらいに小声だった。


しかし桐生君には確かに届いたようで背後から、着地する音がする。




「全部、聞こえてたよね」




最初から、一人では無かった。私が頼んだのだ、此処に隠れて黙っていて欲しいと。


ここに来る前に“彼”を呼び出した。