「如月さんとお幸せに」

「椎名さんもね」




その言葉に僅かに目を見開いてから、フッと力無く笑う。


小田切君は最後に微笑みを浮かべて屋上を去って行った。


私も最後に、好きだった人の笑顔を見れて良かった。
これで後腐れなく諦めることができる。


ーーガチャン、と屋上の扉が閉まるのを音で感じて私は吐息を零した。


フラれたという事実に胸が痛かったけど、それは不快なものじゃない。これは私が乗り越えた証明でもあるのだ。


小田切君を好きになった事は後悔していない。小田切君はずっと追い掛けてきた初恋の人。漸く、私の初恋に終止符を打つことが出来た。


人を好きになるって、こう言う事なんだ。


蟠りが熔けて、胸がスッとする。
憂鬱な気持ちが、薄れていく。


これで、良かった。




「ありがとう、小田切君」




大好きでした、さようなら。