嗚咽する私に、小田切君が手を伸ばそうとするのが分かる。
優しい、ね。
でも、ダメだよ。
そんなことされたら期待しちゃう。
涙で歪む顔でヘラリと笑う。
無理矢理上げた口角は引き攣っている。
小田切君が悲しげな顔をしたけど、私は、大丈夫。
だって私には、いつも慰めてくれていた彼がいるから。
「…っいきなり泣いちゃってごめんね…」
ゴシゴシと涙を拭って、また笑う。
伸ばした腕を戻してくれるように。
案の定、小田切君はホッとして柔らかく笑い掛けてくれた。
「如月さん、大切にしてあげてね」
小田切君は、私の言葉が強がりに近い事を分かっているだろう。私もそれは自覚している。
でも、これは本音だ。如月さんが私の背中を押してくれなかったら、未だに殻に閉じ籠っていた。
小田切君の隣は、如月さん以上に相応しい女性なんていないと思う。如月さんを、大切にしてあげて欲しい。醜い感情が嘘だったかのように、今はすごく穏やかだ。