「でも、もう来てくれなくなったって事は“そう言う”事なのかな?」




うん、私には大切な人が出来た。


桐生君を守りたい。
桐生君が大切だから。


優しい笑顔で言う小田切君に、コクンと頷く。




「あの、ありがとう、ちゃんと答えてくれて」




鼻を啜って、精一杯の笑みを浮かべて、私は小田切君にお礼を言う。


ちゃんと笑えているだろうか。引き攣ってたりしないかな。最後くらい、良いところを見させて欲しい。




「こちらこそ。俺なんかを好きになってくれてありがとう」

「…っ」




照れ臭そうにほんのり頬を赤くする小田切君に、ギュウッと胸が痛くなる。







ーーもっと。
もっと早く、伝えていればよかった。


苦しくて、痛い。
でも、嬉しい。


小田切君はこんなにも優しかったのに。
私は一体何に怖れていたんだろう。


雲の上の人だと遠目からしか見てなかった小田切君は、こんなにも近かったというのに。




「…っ…」




ポタッと涙が落ちる。


鼻の奥がツーンと痛み、目の縁から涙が染み出てくる。


照れると首を触る仕草とか、
顔をクシャリと崩す笑い方とか、
私の知らない小田切君でいっぱい。


この一年半、私は小田切君のどこが好きだったんだろう。


一年半、私は、彼のどこを見てきたのか。


わたしは、何をしていたの。




「……っう…あ…っ」




もっと、彼の素敵なところを見つける時間なんて沢山あったはずなのに。


悔しい、よ。




「…っふ…うっ…」




早く、
もっと、
早く、好きだと伝えていれば良かった。




「…っく…」




腕で顔を押さえて、涙を防ぐ。


しかし涙は溢れ出て止まらない。