「椎名さんなら、蓮を幸せにできるよ」




ふんわり、やや苦笑い気味に微笑む如月さんは立ち上がった。




「…頑張って」




優雅な仕草で手を振って立ち去って行く姿を、私は無言で見つめる。


背を向ける際に目元がキラリと光っていた。後ろから見る背中は丸く、肩も震えている。


彼女は、私に涙を見せなかった。


小田切君が如月さんを好きになった理由が分かった気がする。如月さんは私が思うより、賢くて優しい子でーーー強い。自分と言うものを持っていて、真っ直ぐに私を見つめてくる。


如月さんには、桐生君とそっくりな部分がある。
幼なじみって、不思議。


彼女の背中を見て、小さく頷く。




「そう、だよね」




窓から見える空を仰いで、呟いた。


いつまでも、逃げていられない。