「桐生君は一人じゃないよ」



でも、捻りのない言葉だからこそ、響くときもあるかもしれない。


桐生君の表情を見ながら、私は背中に手を回した。


縋るように覆い被さってくる桐生君を抱き締める。大きい体なのに今は、すごく小さい。



「…離れるなよ、花霞」

「ん」

「…裏切ったら呪う」

「ふふ。うん、呪われる」



いつもの調子に戻りつつある桐生君に口元が綻びる。少しでも痛みが緩和されるなら幾らだって言おう。



「私は、桐生君の傍にいるよ」



揺らいだ目を閉ざすと、求めるように強く抱き寄せられた。