しかし添えられていた指が頬をなぞったことで、空気は一変。



「…ひゃん…っ」



耳朶にキスをされ、不意打ちの刺激に甘い声を零す。


一瞬だけ見せた"男"の目に怖くてゾクッとした。



「きっ、きりゅうく…!」



顔中にキスを落とされて、全身が震える。



「…何?」

「あっ…」

「…言わなきゃわかんねえよ」

「…っ」



熱い。止めてと言おうにも言わせてくれないのに、桐生君は私を責める。
熱い。舐められてる首筋が熱い。


リボンが緩まり、少しはだけるワイシャツ。
舌が鎖骨に触れて甲高い声が零れる。


他人が見たならば恋人同士の睦みあいかもしれないけれど、当事者はそんな甘い関係だと認識しないしていない。私達は空っぽで、愛に飢え、現実を忘れたいだけ。私達はあぶれ者だから、代わりを求めずにはいられないのだ、どうしても。


お互い似た者同士だと、重ねられる唇を感じながら漠然と思った。