冷たい彼-初恋が終わるとき-




「…貰っていいんだよな?」

「…え?」

「…あ"?」



聞き返した私に桐生君は威嚇してきた。



「…何だ?先約でもあるのか?」

「先約はな、」

「ねえよな。お前の物は俺の物だから俺が貰う」



先約は無い。そう言おうとした私に被せてきた桐生君はジャイアニズムだった。そしていきなり袋を開け出す桐生君にまたもや目を見開く。



「え、ええ!?い、今食べるの?」

「…悪いか」

「い、いえ」



貰うことすら驚いたけど今食べることにも驚いた。


睨まれて口を閉ざした私は、半透明の黄色の包み紙を見つめる。私のチョコレートとは違うプレーン味のクッキーだと思う。それをちらちら見る私に気付いたのか、桐生君は眉根を寄せた。



「…これは後で捨てる」

「す、すてっ…!?」



驚きのあまり大声を出してしまう。


慌てて口を手で隠す私を、気に止めることなく、クッキーを乱暴にポケットに仕舞った。その乱暴さにクッキーが砕けてボキッ、バキッと音が鳴る。