「なー、このチョコ食べていいの?」


しばらくお互い黙ったままでおでこをくっ付けあっていたが、竹田が先に口を開く。


「ご飯の前だから2個だけね」



竹田から離れて、何とか立ち上がった私は自分のほっぺたを何度も叩きながら逃げるようにキッチンに戻った。


ガサガサとつぶれてしまったリボンをほどく音が耳に届く。



「うわー、すげー!手作りじゃん。


うわっ!美味い!! すげー美味いよ、これ」



竹田はかなり興奮しているようだ。


竹田だってこんな形でバレンタインチョコをもらうなんて思ってもいなかっただろうから存分に照れているんだと思う。



「……カードも入ってる」



その声に料理が手につかずシンクの縁を握りしめていた手に力がこもる。


私がたくさんの時間をかけて考えたメッセージ。


彼は何て答えてくれるんだろう?








「………………ふーん」


かなり長い間黙っていた竹田がやっと言葉を発する。


私は、さっき抱き締められた時と同じくらいドキドキしながら振り返った。