ユウとレナは観覧車を降りると、荷物を手にタクシーに乗って新神戸駅へと向かった。

ユウは片方の手に荷物を持ち、もう片方の手でレナの手を握って歩いた。

(ホントは離したくないんだけどな…。)

改札の前まで来ると、レナは新幹線のチケットをバッグから取り出し、ユウの手から着替えの入った鞄とカメラの入った重いバッグを受け取った。

「ありがとう。ごめんね、重かったでしょ?」

「いや、オレは大丈夫だけど…レナは大丈夫か?」

「カメラのバッグが重いのには慣れてるから大丈夫だよ。」

「そっか…。気を付けてな。家に帰ったら電話して。」

ユウがレナの頭を優しく撫でると、レナは穏やかに笑みを浮かべる。

「うん、わかった。ユウも気を付けてね。」


小さく手を振って改札を通り歩いて行くレナの後ろ姿を、ユウは片想いの頃のような切ない気持ちで見ていた。

(行っちゃったな…。)

離れて行くレナの後ろ姿を見つめて、ユウがため息をついた時、レナがクルリと振り返って、ユウに向かって手を振った。

(あっ…!!)

嬉しくて思わず満面の笑みで手を振り返したユウの胸の奥が音を立てる。

(なんだこれ…。なんだこのキュンって…。)

レナの姿が見えなくなると、ユウは胸を押さえた。

(オレってやっぱ、高校時代からあんまり変わってないのかも…。)


レナのことを考えると切なくて、レナが笑うと嬉しい。

レナと会えるとドキドキして、レナと離れるのが寂しい。

気が付くと誰よりも大切で愛しくて、掛け替えのない存在になっていたレナが、自分の帰る場所になったことが、ユウにとってとても幸せなことだと思った。