「聞いたか?」

「聞いた。」

「これって自慢か?」

「ノロケなのか?」

「やっぱりユウから奥さん奪っちゃおうぜ。」

「オレも参戦する!!嘘じゃなくて、本物のオレの奥さんでーすって言いたい!!」

「じゃあ、最年長のオレも参戦すべき?」

「4人で争奪戦だな!!」

「なんでそうなるんだよ!!オレの嫁だから!!オマエらには絶対渡さん!!」

ユウはあたふたしているレナを抱き上げると、スタスタとステージの裏へとレナを運んだ。

「ユウ?!」

レナはいつもと違うユウの堂々とした姿に驚いて顔を見上げる。

「オレはレナの旦那だから。かわいい奥さんはちゃんと守らないと。」

ユウはレナをそっと下ろすと、頭を優しくポンポンとやって笑みを浮かべる。

「行ってくる。」

「うん。頑張ってね。」

レナに軽く右手を上げてステージに向かうユウの背中を、レナはじっと見つめた。

(昔、ユウが私から離れて行った時は、ユウの後ろ姿にどんなに手を伸ばしても、もう届かないんだってすごく寂しかったけど…今は誰よりも私のそばにいて、私を包んでくれる…。ユウと一緒にいられて、本当に幸せ…。)

レナは幸せな気持ちで、ユウのギターの音を感じながら、`ALISON´の演奏と、アンコールに沸く会場の熱気に、目を閉じて身を委ねた。