ユウは、レナが“もうどこへも行かないで”と泣きながら何度もユウを求めてきた夜のことを思い出した。

(いつもと様子が違ったのは、レナがケイトからオレとの過去を聞いて不安だったから?!)

思えば、あれからレナの様子がおかしかった。

レナがユウの知らない過去を話したのも、あの後のことだ。

さっき、レナは“嘘ついてごめんね”とは言ったが、何が嘘だったのかは言わなかった。

(もしかして…他の男と付き合っていたって話の方が嘘?!)

もしそうなら、なぜレナはそんな嘘をついたのか?

(そのせいでオレは、レナのことをめちゃくちゃ疑って…レナが他の男のところに行くんじゃないかって…。)

そこまで考えて、ユウはやっと気が付いた。

わかって欲しかったのは、知りたくもない相手の過去を知った時の気持ちなのかも知れない。

好きな人の過去の相手が現れて、自分の知らない過去の話をしたり、親密そうに近付いてきた時、それがどんなに不安なのか。

思えば今まで、レナは知りたくもないユウの過去の相手を何度も見ている。

その度にレナは、どんな気持ちでいただろう?

強く責めたり怒ったりしないレナのことを、過去のことは仕方ないと許してくれているのだと思っていた。

(オレ…バカだ…!!)