外に出た途端、冷たい風がビュウッとコートの裾をはためかす。今夜は風が強い。乾燥もしていて本格的に冬の気候だ。
冷たい外気に一瞬ブルリと身を震わせた後、私は住宅街からお店の建ち並ぶ駅前の方へ向かって走り出す。けれど。
……あ、でもこの時間じゃ薬は買えないかもしれない。その事に気付いてふと足を止めた。
どこか24時間薬剤師が対応している薬局かコンビニ、近くにないかな。焦りながらもコートのポケットからスマホを取り出し必死に調べていると。
「宗根様」
「ひゃっ!?」
静まり返った住宅街の中で突然声を掛けられ、私は驚いて裏返った声をあげてしまった。
顔を上げて見れば、ダークスーツに身を包んだ背の高い男性がふたりと女性がひとり。ものっすごい不審な容貌だけど、この人達には見覚えがある。
社長のお付の人だ。なんだっけ、せ……セレクタリーだっけ?とにかく、公私共に結城に仕えて社長のワガママを聞いてる……もとい、補佐をしている人だ。
「えっと、社長のお付の人ですよね」
「結城がお世話になっております」
礼儀正しく頭を下げられてしまい恐縮のあまり動揺を見せてしまったけれど、彼らの纏っている雰囲気はカチッとした緊迫感を帯びたままだ。
「恐れ入りますが、充様に異常があったとお見受けします。既に入院の手配は済んでおりますので、これからお部屋に伺わせて頂き充様をお迎えにあがりますがよろしいでしょうか?」
「え!?な、なにそれ」
スーツの人が言ったことが理解できなくて、私は夜中だというのに大きな声を出してしまった。



