けれど――。
ピンポーンとインターホンが鳴ったのは、いよいよケーキを食べようかという時だった。
こんな日にこんな時間に誰だろう、と社長と顔を見合わせる。
立ち上がって玄関に向かいながら、
「私のケーキのチョコの家、勝手に食べないで下さいよ。社長にはマジパンのサンタあげたんですから」
と、私のお皿に向かって手を伸ばしている社長に釘をさしておいた。
けれど、そんな和やかで楽しい気分は扉を開けた瞬間、驚きに吹き飛んでしまう。なぜって。
「…………灯里……」
「……い、イサミちゃん……!?」
ドアの向こうにうなだれるように立っていたのは――遠く神奈川の地に居るはずの幼馴染だったのだから。
「ど、どうしたのイサミちゃん!?」
私があまりにも驚いてしまったのは、連絡もなしに突然イサミちゃんが現れたから、だけではない。
「……ごめんね、急に……でも、どうしても灯里に会いたくて……」
イサミちゃんが、あの強くて頼もしくていつも堂々としてて、弱みなんか一度も見せたことのないイサミちゃんが……目を真っ赤にして泣き腫らしていたからだ。
「と、とにかく入って!」
私はひとまず寒い外に立ち尽くすイサミちゃんを部屋の中に入れた。うなだれるイサミちゃんの肩を抱いたとき、コート越しでも分かるほど彼女の身体が痩せこけていたことに内心ショックを受けながら。



