部屋に帰って、私はワンルームの室内の飾り付けを始めた。
社長は今日もお仕事兼パーティーだ。帰宅は夜の八時になる。
それまでに少しでも部屋をクリスマスらしく盛り上げようと思って、私は雑貨屋さんで買って来たグッズを取り出した。
テーブルに乗るサイズの小さなツリー。窓のペイントスプレー。手作りできるリースのセット。なんともこぢんまりとした手作り感溢れる飾りつけだけど、この小さな部屋にはお似合いだと思う。
そして部屋がそれなりになったら料理の準備を始める。チキンとケーキは既製品だけど、シャンパンに合うオードブルくらいは手作りしなくっちゃ。
私はプランターで地道に育ててきたハーブを使ってサラダやブルスケッタを作り、テーブルにもクロスを敷いて着々と準備を進めた。
「さて、そろそろ社長も帰って来るかな」
時計を見ればもうすぐ八時。いつもより社長の帰宅が待ち遠しくて仕方ない今日の私は本当に子供みたいだ。
――そうして、逸る胸で待ち侘びる私の元へ帰って来たのは。
「メリークリスマース!! 宗根っちー!」
「えっ!? えええ!?」
いきなり玄関のドアが開くなり、パーンと派手にクラッカーを鳴らしながら入ってきた社長だった。
頭の上にクラッカーの紙テープを乗せたままボーゼントしてる私に、社長はゲラゲラと笑う。
「驚いただろー? ビックリさせようと思ってさ、リムジンの音させないように大通りから降りてわざわざ歩いてきたんだぜ」
「わ、わざわざ歩いてって……ぷっ、あはは、あはははは! ちょっとはしゃぎ過ぎじゃないですか?」
「あははは、お前だってあっちこっち飾り付けしちゃって、人のこと言えないだろー?」
生まれて初めて好きな人とふたりきりで過ごすクリスマスは、そんな笑い声に包まれて始まった。



