瀬戸くんと、ふたりきり。





「チビ、ここまで来い」


そう言った瀬戸くんは、まるで子供にするように大きく両手を広げた。



相変わらず呼び方は“チビ”のまま。

けど、それでもいいと思った。


瀬戸くんが呼んでくれるのなら、もう何でもいい。



「行きます!」


右手を上げ、スゥと大きく空気を吸い込む。

そして、よしっと一度頷いて、思いっきり地面を蹴った。



瀬戸くんが立っている場所はプールのちょうど真ん中。

そこまでクロールで泳いでいく。


一週間前までは数メートルも泳げなかった私だけど、今は瀬戸くんのお陰で何とか半分まで泳げるようになった。



今日で完全に終わらせるために。


瀬戸くんにもう大丈夫だと思って貰うために、私は絶対泳ぎきらなきゃいけない。


これは私のためであり、瀬戸くんのためなんだから。



そう思うだけでどこまででも泳げるような気がした。




待ってくれている瀬戸くんの元へ。

必ず泳ぎきる。