「……じゃあ、失礼します」

「あぁ、頑張れよ」



榊原先生に軽く頭を下げ、体育教官室を後にする私。



今から向かうのは、練習場所であるプール。

私はこれから、瀬戸くんと最後の練習をしに行く。

そのために今、体育教官室でロッカーの鍵を受け取ってきたばかりだ。



それともう一つ、榊原先生に言わなければいけないことがあったから行った。

それは、瀬戸くんのことを榊原先生に伝えること。



先生は瀬戸くんがサーフィンをやっていることを知っていた。

去年、たまたまあの海へサーフィンをしに行った時、瀬戸くんを見かけたらしい。


だから先生は瀬戸くんに私の指導を頼んだんだ。


泳ぎが上手なのを知っていたから。

けど、先生はサーフィンをしてみようかなと思って海へ行っただけで、特別サーフィンに詳しい訳ではない。


もうすぐ大会があると言った時も先生は知らなかったと言っていた。

知っていたら先生は瀬戸くんに私の指導をしろとは言わなかったかもしれない。


ううん、絶対に言わなかった。

先生の口振りを見てたら分かる。