足音が聞こえなくなっても、私の足はその場から動こうとはしなかった。


早く着替えて瀬戸くんの元へ行かなきゃいけないのに。

待ち合わせ場所に行かなきゃいけないのに。


それなのに、私の足はその場から一向に動いてはくれない。


だって、まだちゃんと理解出来ていないんだもん。




───わかってる。

これからどうすることが瀬戸くんにとって一番いいことなのか。


ちゃんと、わかっている。


だけど、瀬戸くんと離れたくないと思っている自分がいて。


私は、最低な人間だ。


瀬戸くんにとって大事な試合だと知っていながらそんな風に思うなんて。


なんて醜いんだろう。




……そうか。私……


離れるという現実を突き詰められてやっと気づいた自分の気持ち。



私、瀬戸くんのことが好きなんだ。




離れたくないと思うのも、

こんなにも胸が苦しくなるのも、

あんなにも胸が高鳴るのも、


全部、全部瀬戸くんが好きだから。



瀬戸くんのことが大好きだから。




……バカだ。

本当に大バカだ。


離れなければいけない状況になってから自分の気持ちに気づくなんて。