瀬戸くんと、ふたりきり。



………あれ?


プールに入って再び瀬戸くんを見上げると、さっきまでそこにいた筈の瀬戸くんの姿が何処にもなく。

どこに行ったんだろうと視線を滑らせれば、プールサイドを気だるげに歩いている瀬戸くんを見つけた。



「瀬戸くん!どこに行くの!?」

「ゴールにいる」



ゴール?



「水沢、アイツ目指して泳げよ」

「……え?」



瀬戸くんを目指して?


首を傾げるや否や先生にそう言われた私は、意味が分からず先生を見上げた。

すると、目が合った先生はニタリと含み笑いをし、一言。



「若いって良いねぇ……」



……何それ。意味分かんないんですけど。


こりゃ駄目だと諦めた私は、再度瀬戸くんの方へと目を向けた。


すると、瀬戸くんは既にゴール地点である25メートル先にいて、さっきと変わらず気だるげな様子で私を見据えている。


目が合った瞬間、フッと小さな笑みを零した瀬戸くん。

かと思えば、瀬戸くんの口がそっと開き、何か言った。



瀬戸くん……


私の見間違いじゃなければ、瀬戸くんはきっとこう言ったんだと思う。



“ここまで来い”