「帆夏」
再度瀬戸くんの口から放たれた自分の名前にドクンと鼓動が飛び跳ねる。
けど、どうしても言えなくて。
頭を振ってただただ無言を貫いた。
すると、突然引き寄せられた後頭部。
「瀬戸く──」
抱き寄せられたことに気付いた時にはもう私は瀬戸くんの胸の中にいて。
ギュッと、隙間がなくなるぐらい強く抱き締められた。
冷たい水とは反対に、温かい瀬戸くんの胸の中。
右頬が瀬戸くんの胸元に当たって、瀬戸くんとの距離がゼロになる。
──なんだろう。
水を含んでいるはずなのに、瀬戸くんの着衣からは冷たさなんて全く感じなくて。
伝わってくるのは、瀬戸くんの体温と少し速い心音だけ。
ううん。
もしかしたらその心音は自分のものかもしれない。
だって、自分の心臓も凄い速さで動いているのが分かるから。
私は今、瀬戸くんの腕の中にいる。


