瀬戸くんと、ふたりきり。




──息が、止まったかと思った。

ううん。確実に止まった。



あれだけ振り回していた体はピタリと静止し、俯いていた頭は瀬戸くんに無理矢理上げさせられていた。



私の顎には瀬戸くんの手。

ガッチリと固定されてて、動かそうにも動かせない。




……瀬戸くん、今、私の名前呼んだ?





「──悪い。乱暴にしすぎた」



さっきの口調とは打って変わって落ち着いた口調。

けれど、掴まれた顎はそのままで。



「………」


瀬戸くんはきっと私がまた暴れだすんじゃないかと疑っているんだと思う。

でも、今の私にはもうさっきみたいな勢いはどこにもない。


だって、まだ頭の中で瀬戸くんの声が響いてるから。


“帆夏”って呼んでくれた声が、まだ頭の中で響いてる。