「……あいつらしいね」

「うん。圭祐らしい」



珍しく圭祐に対して噛み付かなかった美来ちゃんが、圭祐が去っていった方を見ながらフッと呆れたように溜め息を吐き出した。



美来ちゃんも分かってるんだね。

圭祐の優しさが。

だから、突っ込みどころ満載な圭祐の発言もスルーしたんだ。



「今度、奢らなきゃね」



手のひらの上には、さっき圭祐から手渡された紙切れ。


横並びの文字に視線を走らせると、それは私の苦手なことばかりが書いてあった。


あの短時間によくここまで分析していたもんだよ。ホント感心。


さすが運動部の助っ人をしまくっているだけのことはあるっていうか。


見ていないようで結構見てるんだね。

見直したぞ、圭祐。


フフッと笑みを浮かべて、紙切れを鞄の内ポケットに入れた。