「動くぞ」
頭上から落ちてきた瀬戸くんの声にピクリと体が揺れる。
それを痛みだと勘違いしたのか、瀬戸くんは「悪い、すぐ上がるから」と言って歩く速度を緩めてくれた。
その優しさに胸がキュッと押し潰されそうになる。
ドキドキと早鐘を打ちながらも痛みが生じるぐらい苦しくなって。
触れる肌から感じる微かな温もりにクラッと眩暈がしそうになった。
……あぁ、もう本当に大好きだ。
好きで好きで好きで。
ホント、どうしようもない。
だって、心だけじゃなく体全体が瀬戸くんのことを大好きだって言ってる。
波打つ鼓動も。
触れた所から生じる甘い熱も。
喋るだけで震える唇も。
全部全部瀬戸くんが大好きだって言ってる。
この時間がずっと続けばいいのに。
ずっとずっとずっと一緒にいられればいいのに。
だけど、そんな甘い願いは叶わない。
私は今日、瀬戸くんとバイバイする。
明日からはもう、このプールにいるのは私一人。
そう思っただけで、熱が籠った心が段々と冷たくなっていくような気がした。


