エリーは、マリアさんに死神の棲むヤクトへ行けばもしかすると、呪いを解く鍵が見つかるかもしれないと言われて、南へと歩き続けていた。

この当たりは、砂漠で……とても喉が乾く。

しかし、前を見ると町は直ぐ目の前だった。

町へ向かって歩き続けていると、突然、青年が道を妨げてきた。

ヤクトの町人だろうか?

服装は、グラフチェック柄のシャツにジーンズといった極普通の格好だった。

つり上がった力強い目に、真っ白な歯が特徴的な整った顔立ちは目を奪われる。

「君? ……この先は、ヤクトだよ。危険だから絶対にこれ以上は進むんじゃない」

「……え」

突然、道を妨げる青年を前にエリーは足を止めた。

「死神に命を吸い取れられてしまうんだ。」

「それは一体、どういう事ですか?」

「君、そんなことも知らないのかね……。狙った人間を永遠の眠りにつかせる呪いをかけて、徐々に....命を吸い取ってゆくんだ。分かったら、帰った帰った!」

そう言って、青年は両手をしっしとさせた。

「……」

エリーは、目の周りが熱くなるのを感じた。そして、目一杯に涙が溢れだす……。

その涙は、川のように頬を伝っていった。


それを見ていた青年は、突然優しくなった。

「……っど、どうしたんだい? そんなに、傷つけてしまったとは……申し訳ない。取りあえず、俺の家に来なさい。あそこは身を派手に着飾ってさえ居なければ、死神に見つかることは無いから。どうだい?」

「え……本当に、いいんですかぁ?」

すると、上目遣いをしながら、そう言ったエリーに向かって青年は白い歯をむき出しにしながらニヤリと笑った。