『はー…』

あんなことから、一週間。
私はこの大きな家…いやお店で
住み込みで働いている


畳を雑巾で拭きながらため息を吐くと
渚さんが 文机の帳面から目を外して
こちらを睨んだ。

「ちゃんと、掃除せえよ」

『あ、ハイ』

首をすくめて また腕を動かすと

渚さんは また凛とした表情で
帳面に筆で何か書いていた。


あぁ、眩しい。
渚さんの部屋の和風の窓は大きくて
日差しが沢山入ってくる その日に目を
細めながらも 雑巾をタライの中の
水に浸す。


ここは、渚さんのお店。
白羽さんに聞くと どうやら 雑貨屋…
という感じだ。

それも、随分と大きく
一階に店があり、二階に住み込みで
働いてるような人の部屋が沢山ある。


ちなみに渚さんの部屋は他とは違って
店主なので大きい部屋で、 触っただけで
怒られそうな物ばかり。

少しビクビクしながら掃除しなければ
いけない。


私は注意深く拭きながら 渚さんに
話しかけた。


『あの… 私はいつ外とかに…』

一週間も部屋の中にいると 息が詰まり
そうになる。 やっぱりそこは聞いて
おかなくちゃね。


「…今日何とかなる…と思うわ
夜にでも白羽が来るから茶でもなんでも出しとけ…何にも出さへんかったら
グズるからな」

『…白羽さんが』

白羽、とは あの狐男さんだ

呉服屋の店主らしい。呉服屋とは
和服を売っている店、渚さんとは
とても 仲がいい…?みたい。

よく渚さんとお酒を飲みに この部屋に
一週間以内に何度かいらっしゃっている。