『あの…私』
どうしてここに?と聞こうとすると
関西弁の人が 私の前にかがみこんで
黒い透き通るような目で見つめてきた
「アンタ、人間やろ?」
『へ…はあ ハイ。』
気の抜けた返事をすると関西弁の人は
あー、とけだるそうにつぶやいた
「人間が迷い込んできたんか…
難儀なことやなぁ …それも女て。」
「そうだね、人間は僕ら妖怪にとっておいしいオヤツだからね」
『な、何を言っているんですか…?
貴方たちも人間でしょ? コスプレ
してるだけですよね』
思いっきり 身を引きながら言うと
狐の男の人は大きな声で笑った。
「あははははっ…僕を見ても人間だって思うの?ほら 尻尾だって動くんだよ」
狐の人はニタニタしながら 煙をくゆらせた。 甘いような香りが部屋の中に漂う
『…この人はコスプレしてるだけですよね』
関西弁の人に聞くと 関西弁の人は真顔で
首を振った。
「いや、アンタのおった 世界とは
ここはちゃう ここは妖怪の街
大江戸や」
それに、と言いながら関西弁の人が
前髪を片手で がばっとかき上げた
そこには さっきは目立たなかった
狼の歯のようなツノがおでこの真ん中の上辺りに生えていた。
私は さあッ…と血の気が引いた
「…見たか?俺は鬼や
それに、窓の近くに居るあいつは白狐や」
「ふふふ、ほらこちらにおいでよ」
布団の中で座り込んでいると
狐の人が私をぐいっと引っ張って
窓の近く寄せた。
ここは建物の2階のようだ。
造りが、まるで時代劇。 いや、それを
華やかにした様な感じ。
『あッ…』
私は思わず目を見開いた
夜空で龍が飛び
黒い羽を羽ばたかせながら飛んでいる
天狗。
白い猫が二足歩行で歩いていたり 黒い人型の猫がちょうちんを持って歩いていた。
