「おい、白羽 ホンマに生きてんのか
死んでるみたいやけど…血もぎょうさん流れとったし」

「僕の腕を疑うわけ?渚 、大丈夫に
決まってるでしょ」

「嘘くさいなーお前。」
「あはは、性分だもん ってゆうか
お酒ないワケ?喉乾いたんだけど」


近くで 男の人2人の会話が聞こえてくる
…え? 誰ッ!?

『う…ッん…』

痛む頭を押さえて 起き上がると
自分は布団の上に寝かされていた。

どうして、どうして私は生きているの
たしかビルの屋上から飛んだはず。

混乱していると 部屋の中から声がした

「おう、起きたな…アンタ 大丈夫なん?」

関西弁の低い声の人が 薄暗い部屋の中
私の額に手を伸ばして 触れた。
灯に照らされて 見えた顔は…


『…っ』

大人の色気が溢れた 妖美な男の人。
切れ長の目 黒々とした瞳。

無造作な黒髪 それがまた
色気がある。だが、色気がある
としても…まだ二十代といった所だ。

それにしても、着ている服が
不思議だ…和風。 着流し、という
やつかな…? 基本は黒で えりや
袖の一部が赤い色で模様がある。


胸元がはだけていて、随分鍛えている
のか スラリとしているのにどこか
獣の様な印象が強い。


「眩暈とか吐き気とかない?」

と、涼やかな声がした方を向くと
目を疑った。丸い和風の窓のが開いていて、月光が照らす人は…


目が金色に光っていて 髪が白…
と言うより銀色に光っていて 頭の
てっぺんには 猫耳ならぬ 銀色の
狐耳がぴょこん、と生えていた。


その人の背後にふさふさの銀色の
大きな尻尾が揺れている。

手には キセルを持って 煙を燻らせて
ふーっ…と煙を吐き出した。

口には、キラリと光る犬歯が覗いている


その人も、白や水色が多い和装を
している。


『あ、ない です。』


その人も 男前だった。 さっきの人とは
違う、爽やかの中にどこか妖しさを
持った人。

頭が追いつかない。ここは病院じゃなく
コスプレ会場なのかな。


「そっか、良かった。ホラね渚
僕の術は絶対なんだから。」

「はっ…幸せな奴やなあ」

「そりゃどうも」

明らかに 関西弁の人が呆れたのだが
さらり、と狐耳の人が受け流す。